まだナンパ師になりたての頃の即のお話 〜ある冬の記憶〜

2013年のハロウィン

正確に言えば2013年の10月31日に俺はナンパ師になった。

そんなまだナンパ師になりたての頃のお話。

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0:30 川崎市某駅

気温は氷点下2℃。この冬一番の寒さが身に染みる。俺は一人改札前で彼女の到着を待った。

 

「久しぶり!少し太ったんじゃねーの?笑」

 

出会ったあの日と同じように冗談の応酬が始まった。

身長150センチ。その小柄な体型にはとうてい似つかわしくない気の強さは、言動だけに留まらず彼女の濃いめのルージュやヒョウ柄のタイツにもよく表れていた。

 

「女の子をこんな遠くまで呼びつけやがって、、、」

 

彼女は旅行帰りだった。空港から終電を乗り継いで一時間もかけて俺の自宅最寄駅までやってきたのだ。たくさんのお土産と思い出で溢れんばかりの大きなトランクをゴロゴロと引きながら。その健気さは素直に嬉しかったし、この様が今夜のあらゆることを確信させた。

 

「つべこべ言ってないで早く行くぞ!風邪引いたらお前のせいだからな!笑」

 

幸い?近所の居酒屋が閉まっていたためコンビニでビールとつまみを買い、自宅へ向かう。

お互いスウェットに着替え、宅飲みを開始した。

まずはビールで乾杯。

グラス片手に互いの近況について語り合う。

お互い二缶ずつ飲み干し、続いてウィングから貰ったという体のシャンパン(ドンキで1000円のスパークリングww)を互いのグラスに注ぐ。

彼女はいつにも増して饒舌になり、頬はほんのり赤く、目元がトロンと下がってきた。

ここだ。俺は確信した。

 

「ケーキ準備したんだ。イチゴすきだろ?」

 

彼女と俺は同じ誕生日だった。

今夜はこの偶然を祝す、少し遅れた二人のための細やかな誕生会だった。

この夜一番の笑みが彼女の少し小さめの口から溢れた。

ショートケーキを互いに食べる。

そして食べさせ合う。

 

「イチゴ貸すよ。」

 

彼女がイチゴを頬張る。

 

「貸したものは返してくれよ。」

 

そう言いながらキ○をした。

長いキ○だった。

俺の右手は彼女の胸元に伸びる。

その手を彼女が拒む。

 

「私今夜はやんないよ。やったらもう会いたくなくなる。○○君、やっぱりヤリ目なの?」

 

俺は葛藤した。

付き合いたいとは微塵も思っていない。

しかし彼女に軽蔑されるのは嫌だった。

その自身の恐れをごまかすかために(彼女に、そして自分に)、また長いキ○をした。

互いに唇を求めあった。

優しくときに激しく。

そこから言葉は不要だった。

彼女の小さな手を引いてベッドへ。

ナンパしたその日を含めて彼女と会うのは二回目だった。

俺は準即を決めた。

 

 

「ナンパされたとき何でついてきた?何で俺ともう一度会おうと思った?」

 

「話が合ったから。共通点が多かったから。あとはわかんない。何となく。ノリかな?」

 

結局彼女は口を割らなかった。

最後の一枚をめくることはできなかった。

彼女には付き合って二年足らずの彼氏がいる。

俺に今の彼氏から自分を奪い取ってほしかったのだろうか?

俺が今欲しいのは彼女ではない。

どんな女でも口説き落とせるルーティンと、それに伴うみなぎる自信と確信。

そして最高のPUAの称号とこのプロジェクトの成功だ。

彼女に会うことは二度とない。

 

< 案件 >
スト値-7

属性-ギャル

特徴-二人姉妹の末っ子。ガールズバーの店員とのことで人慣れ、話慣れしている。地頭良し。一見の気の強さ(ド派手な身なり、言葉遣いの悪さ)はハートの弱さを装うもの。押しに弱い。

< 学び >
この夜は彼女にとって人生最高の夜になっただろうか?

今回も綿密な戦略のもとに作戦は決行された。

し かし準即を決めるということに関して言えば、その戦略は既にいらなかったのかもしれない。ナンパした夜に十分な和みによるラポールは築けていた。成立した 瞬間恋愛も持続していた。それを強固にしたのが誕生日の一致という偶然性だ。この夜はそんな二人のラポールをより深い色へと深化させるために用いられると いうのはもはや暗黙の了解だった。

だがこの慢心が仇となった。彼女がまたどうしても会いたいと、会いたくて夜も眠れないと思える男にはなりえていないだろう。理由は二つある。

まず一つ目。

俺はセクシャルなことに気持ちを持っていかれすぎた。得意の、価値観の核を探り人となりを丸裸にしそこに強い共感を示すことで彼女の感情を鷲掴みにする、これをしなかった。惰性での無駄話に終止した。

そして二つ目。

彼女に言われた。「あたたの性格がよくわからない」。

俺はナンパした日の夜は”ドSで押しの強い男が好き”という彼女のニーズを満たすべく完璧に演じきった。

しかしこの夜は違った。

俺にはある決定的な弱さがある。それは失うことを恐る弱さだ。だからネグが下手だ。一番いいところで関係を切れない。
ラポールを崩せない。押し引きができない。つまり猫の前に垂れ下がった糸になれないのだ。(ソファーでも、ベットのなかでも)

この夜もそうだった。確実に準即を決めたいがために挑戦することを避けた。彼女を感情を揺さぶれなかった。つまり自らただの良い人に成り下がったのだ。

俺はナンパした日の自身のパフォーマンスによってして準即できただけだ。

もう一度己に問う。この夜は彼女にとって人生最高の夜になっただろうか?

否。

ありふれた男女関係の一夜にすぎないだろう。この夜の出来事は直に風化する。

PUAは媚びない。PUAは常に主体的である。PUAは失うことを恐れない。「この子がダメでも構わない、他にも女はいるから。」ーいつもこの心理状態でなければならない。

これができないのは結局のところ彼女に精神的なパワーで負けていたのだ。

もう一度己のメンタルを入念に見直し、より強く鍛え直す。敵はいつも自分だ。

次の女の子には必ず最高の夜を約束する。

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